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千葉日本大学第一中学・高等学校のトピックスページ。

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図書館四方山話その25

 師走も半ばとなり、皆さんがそろって登校するのは終業式の日を残すのみとなりました。冬休みに読む本の準備はできていますか? 中学生の皆さんは朝読書の習慣を崩さないよう、休み中も続けてください。高校生で日頃から読書をしている皆さんも続けてください。普段あまり読まない人は、一日10分から始めてみませんか? たとえわずかな時間でもゼロではありません。17日間ありますので、結構まとまった時間となりますね。冬休み貸出をぜひ利用してください。

 

 さて、今朝の新聞に著名人による「2023この3冊」という記事が掲載されていました。司書も今年読んだ本を振り返ってみたところ、いい本にたくさん出合っていましたので、少しだけ紹介します。3冊には絞れず、5冊となってしまいましたが、そのうち2冊は「司書のおすすめ!今月の一冊」で展示した本なので、簡潔に書きます。

 

 順位をつけるのはむずかしいのですが、その中でも特に印象深い私の「今年の一番」は、津村記久子『水車小屋のネネ』[913ツ](毎日新聞出版、2023)です。分厚めですが、読み始めるとすっぽりとお話の中に入り込み、40年間にわたる物語の世界に浸って、もっと分厚くてもいいのに、と思ってしまいます。読後は脳がじんわりとあたたかくなったまま数週間水車小屋のあたりを漂っていました。10月に読みましたが、今でも思い返すとすぐに水車小屋へ帰っていけます。読書って楽しいなぁ。いい本に出合えて幸せです。

 

 伊予原新『宙わたる教室』[913イ](文藝春秋、2023)は、11月のおすすめ本で紹介、図書館だよりパピルス第116号でも紹介、「何かおもしろい本は?」と生徒に聞かれて紹介したらすぐに借りてくれた本。「火星の夕焼けは、青いんですよ」「え、マジ?」定時制高校科学部で、夜の教室に火星をつくることに挑戦する物語。文系の私についていけるかなと心配しましたが杞憂に終わり、むしろ新鮮な驚きと知らない世界をたくさん見せてくれた本でした。まっすぐな気持ちというのは、胸を熱くさせられますね。「その気になりさえすれば、何だってできる」(p282)という言葉はありきたりなようですが、ドーンと胸のど真ん中に放り込まれた直球でした。中高生の皆さん、ぜひ読んでください。

 

 まだ暑かった9月に読んだ、万城目学『八月の御所グラウンド』[913マ](文藝春秋、2023)は、先日直木賞候補に選ばれましたね。京都を舞台にしたスポーツ小説が2話収録されている本です。<十二月の都大路上下ル>は女子全国高校駅伝に補欠で参加した1年生の物語。<八月の御所グラウンド>は彼女にフラれて夏の予定が消滅してしまった大学生が、借金のカタに真夏の京都で草野球をするはめに陥った物語。どちらも京都ならではの不思議に遭遇。少し切なくなるような、でも優しい気持ちになる物語です。

 

 コロナ禍の世界のリカバリーを書きたかったという青山美智子『リカバリー・カバヒコ』[913ア](光文社、2023)は、触れたところを癒してくれるという伝説のカバの遊具「カバヒコ」をめぐる5つの連作短編集。皆さんも遊んだことがありますか? 身近な公園でよく見かけるいわゆるアニマルライド。カバ以外にもいろいろありますよね。この本の表紙に描かれたカバヒコ、色はところどころはげていますが、とってもかわいいのです。カバヒコのマスコットがほしいくらいです。心があたたかくなる、冬にぴったりな物語です。

 

 11月に展示していた「大学入試問題 国語の出典」で出合った、内田樹『複雑化の教育論』[370ウ](東洋館出版社、2022)は、講演を書籍化したもので、語りかけられる口調でとても読みやすいです。これは生徒の皆さんへというより先生方へおすすめですが。プロフィール紹介によると、内田樹さんは、思想家・武道家・神戸女学院大学名誉教授・凱風館館長と、様々な顔をお持ちで、著作も多数あり入試問題によく採用されていますのでご存知の方も多いと思います。

 司書は夏休み中に学校図書館問題研究会全国大会に参加し、内田樹さんの講演を聴きました。図書館が学校の中にある意味を根本的に考え直させられるお話でした。どんなお話だったかかいつまんでご紹介すると・・・

 「図書館の役割は、無知を可視化すること。一生かけても読めない本に囲まれ、自分がいかにものを知らないかを知り、もっと知りたいと思う謙虚な気持ちになる。自己刷新のプロセスを“知”という。」「司書とは“知”の底知れぬアーカイブの“ゲートキーパー”であり、起源をたどれば魔法使いの眷属なのである。」「生徒たちが“知”のアーカイブへアクセスするゲートを守る者」であり、「生徒たちの無防備な心を傷つけないようミステリーゾーンへ誘う、図書館を守る者」であると。

 この本の中で、人が住まなくなった家はたちまち崩れはじめ、自然に取り込まれてしまうが、それは自然の力がすごいのではなく、人間の力がすごいのだと気づいたと書かれているところがあります。人間はそこにいるだけで、一種のバリアーを作ることができ、「そこにいるだけですでに何らかの力を周囲に及ぼしている。」というのです。人が一人住んでいるだけで、自然の力を抑え、境界が保たれるのです。「司書もただ図書館にいるだけで、実はものすごい力を発動しているのではないかと思ってもいいよね」と、独りごつ司書でした。

 

 これからなにかと忙しい年末へと向かいますが、皆様、どうぞお身体を大切に。忙しい中でも、読書タイムをぜひ作ってくださいね。終業式の日、大勢の皆さんが本を借りに来てくれるのを楽しみに待っています。

 

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